日々変化する青果物の価格。値動きを見るのに役立つのが、卸売市場での価格です。威勢の良いかけ声と共に取引される「せり」のイメージが強いのですが、せりが占める割合は現在はごくわずか。どのように値が決まっていくのか、卸売市場を訪ねました。
徳島のニンジン、神奈川のキャベツ、福岡のイチゴ。見学者デッキからは、野菜や果物を詰めた段ボールがずらりと並ぶ卸売場が見渡せる。
東京都江東区にある都中央卸売市場豊洲市場の青果棟。土曜日の朝、6時半。せりの開始と共に、ここで一般見学者向けのせり解説が始まった。
見学者の真下で、木の芽やワサビなどが次々とせりにかけられていく。「買い手は事前に商品を一通り見て、何を買うかチェックしています」
マイクを持って話しているのは、東京シティ青果の役員。全国から青果物を市場に集め、買い手である仲卸業者らに売る卸売業者だ。解説会は、4、5月の毎土曜日に期間限定で同社が開いている。
「解説があればせりで何が行われているか分かりやすくなる。全国から集まる大量の荷を多様なニーズに応じて迅速にさばく卸売市場の役割を知っていただけたら」と森竜哉社長が企画の狙いを話す。
せりから相対へ
卸売市場は、商品が公正に取引されるよう、国や都道府県が認めて設けられる。需給を反映した価格形成の機能を担い、毎日の取引数量や商品の価格が公表される。
ただ現在、青果や水産物の取引でせりは主流ではない。農林水産省によると、全国の中央卸売市場における青果の取引で、せりが占める割合は1割未満。9割以上は、売り手である卸売業者と、仲卸業者ら買い手との1対1で数量と価格を決める「相対」という方式で取引される。
背景には大手量販店の増加が…